減価償却とは?計算方法や仕組みを理解する

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減価償却の正しい方法を解説!目的や対象の資産・実施する上で注意したいこととは


減価償却は固定資産を持つ企業にとって重要な考え方であり、理解しておきたい仕組みのひとつです。
減価償却を行うと固定資産の購入費を効果的に費用にできるため、節税に生かせます。

ただし、減価償却はその対象となるものとならないものがあり、さらに、減価償却の計算にはいくつかのルールがあります。
減価償却では正確に資産を分類し、ルールに則った計算が重要です。減価償却を正しく行うために、必要となる情報をチェックしておきましょう。

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減価償却とは


減価償却とは、資産を購入した費用を上手に経費に組み込める仕組みです。
減価償却の考え方に基づき、複数年にわたり経費計上していくことで、高額な資産の費用が収益を圧迫し、一時的に利益を激減させないようにできます。

まずは、減価償却の基本的な内容や目的について理解しておきましょう。

減価償却の概要

減価償却は、事業のために購入した固定資産について行うものです。
固定資産も年数が経つうちに劣化して価値が減っていくという考えに基づき、耐用年数の期間に分散して費用として計上していきます。
計上する際の勘定科目は「減価償却費」です。

購入した資産は、固定資産として計上されますが、その時点では全額を経費にはできません。
毎年一定額や一定の割合で、購入代金を少しずつ「減価償却費」として経費にしていきます。

減価償却の目的

減価償却の目的は、その期の利益を正しく計算することです。固定資産は、その期だけで使いきるものではありません。
また、固定資産は複数年に渡って利益を生み出す可能性を持っています。
そこで生まれたのが、購入した時だけで経費にするのではなく使える期間(耐用年数)で分割して経費にするという減価償却の考え方です。

高額な固定資産の費用をその期の経費として全て計上すれば、一時的に経費の額が跳ね上がり、利益が大きく減ります。
しかし、一方で、次期以降は経費がゼロになり、経費なしで利益が出たことになってしまいます。
それを是正し、利益に対してかかった経費をより正確に示すためのものが減価償却です。

減価償却できる資産

減価償却は対象となる資産とそうでない資産があります。
減価償却を正しく行うためには、対象となる「減価償却資産」を知ることが大切です。

減価償却できるのは、業務で使用している資産で時間の経過とともに劣化し、価値が減っていくものです。
形のあるものは有形固定資産、形のないものは無形固定資産といいますが、有形・無形にかかわらず、減価償却資産はあります。

減価償却できる有形固定資産は、以下のようなものがあります。

  • 建物
  • 構築物
  • 機械装置(パソコン、プリンターなど)
  • 車両

無形固定資産も、時の経過とともに価値が落ちると考えられるものは減価償却対象です。以下のようなものがあります。

  • ソフトウェア
  • 特許権
  • 商標権
  • 意匠権

減価償却できない資産

減価償却できない資産としては、業務に使っていないもの、劣化しないものがあげられます。
また、事業に使おうと思って準備したものでも、稼動していなければ減価償却できません。

  • 土地
  • 借地権
  • 骨董品

土地や借地権は劣化しませんし、骨董品などは時間が経っても価値は減少しません。そのため、減価償却はできない決まりです。

減価償却のメリット


減価償却は、きちんと行うことで様々なメリットが得られます。会社を経営するにあたって重要なメリットについて理解しておきましょう。

資金が手元に残る

減価償却では、購入年度以降は実際に出費があった訳ではないのに、経費を計上することが可能です。
そのため、減価償却期間はずっと、減価償却費として計上した金額の分だけ手元に資金が残っていることになります。
実際に毎年現金が貯まっていくとは限りませんが、出費せずに経費を増やせる仕組みです。

正しい損益が把握できる

正しい損益を把握できるようにすることは、減価償却の目的でもあります。長期間使える資産を一度に経費計上しないため、1年間に資産にいくらの費用がかかり、それによっていくら収益を得たのか正しく分かるでしょう。

法人税の節税になる

法人税は毎年の利益に対してかかります。そのため、減価償却を行って1年ごとに経費を計上することには、償却までの期間の法人税を抑える効果もあります。
初年度に一度に経費にしてしまうと、翌年以降は利益のみが増えて税額も増加するでしょう。
しかし、減価償却があれば、長期に渡ってバランスが良い金額の納税額にできます。

減価償却費の会計処理の方法


減価償却を行うためには、正しい会計処理の方法を知ることも大切です。減価償却費の計上方法や計算方法などを解説します。

減価償却はいつから

減価償却を行うのは、業務に使っている資産だけです。使っていない固定資産は、会社の所有物であっても使い始めてからしか減価償却できません。

減価償却の計算のポイント

減価償却の計算では、以下の数字に気を付けてください。それぞれに確認方法や計算方法があります。

減価償却費

減価償却費は、減価償却を行う際に、経費計上に使う勘定科目です。減価償却費は取得原価と法定耐用年数を使って算出します。

取得原価

取得原価とは、その資産の購入費用です。資産を取得した時にかかった本体価格と付随費用の合計となります。
本体価格だけでなく、資産を実際に使えるようにするまでにかかる付随費用も掛かる点がポイントです。

付随費用には、送料や運送保険料、関税、試運転費用、改良費や取り付け費などがあります。

法定耐用年数

法定耐用年数とは、資産を償却する年数で、ものによって異なります。分類とそれぞれの年数は、国税庁が発表しています。

例えば、建物は構造によって11年~50年。以下のように分類されています。

構造・用途 細目 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 事務所用のもの 24
店舗用・住宅用のもの 22
飲食店用のもの 20
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 17
公衆浴場用のもの 12
工場用・倉庫用のもの(一般用) 15
木骨モルタル造のもの 事務所用のもの 22
店舗用・住宅用のもの 20
飲食店用のもの 19
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 15
公衆浴場用のもの 11
工場用・倉庫用のもの(一般用) 14
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 事務所用のもの 50
住宅用のもの 47
飲食店用のもの
延べ面積のうちに占める木造内装部分の
 面積が30%を超えるもの 34
 その他のもの 41
旅館用・ホテル用のもの
延べ面積のうちに占める木造内装部分の
 面積が30%を超えるもの 31
 その他のもの 39
店舗用・病院用のもの 39
車庫用のもの 38
公衆浴場用のもの 31
工場用・倉庫用のもの(一般用) 38

備品類の法定耐用年数は以下のようになっています。

事務机、事務いす、キャビネット 主として金属製のもの 15
その他のもの 8
応接セット 接客業用のもの 5
その他のもの 8
陳列棚、陳列ケース 冷凍機付・冷蔵機付のもの 6
その他のもの 8
音響機器 5
冷房用・暖房用機器 6
電気・ガス機器 6

残存価額

残存価額とは、法定耐用年数が経過した後に残る価値のことです。資産は耐用年数が過ぎても価値が残っている、という考え方から残存価額が決められていました。
ところが、税制改正によって2007年4月1日以降に取得した資産については、残存価額は0円で計算することになりました。

減価償却の方法

減価償却の計算には2種類あります。固定資産の種類によってどちらかが適用できないこともあるため、方法は2つとも知っておくと良いでしょう。

「定額法」

定額法とは、毎年同じ金額を減価償却していく方法です。
計算式は、「減価償却費=取得価額×定額法の償却率」で、償却率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。

例えば、耐用年数が5年、取得価額が150万円の機械の場合では、購入した年から毎年30万円ずつ計上していきます。
ただし、最終の5年目だけは、1円だけ残して、299,999円を計上することになっています。
これは、固定資産台帳に残して、「まだ使っている資産である」と分かるようにするためです。

「定率法」

定率法は、初年度から年々、計上する減価償却費を減らしていく方法です。取得したばかりのほうが使用頻度や利益への貢献度が高いことに基づいています。
計算式は「減価償却費=(取得価額-減価償却累計額)×定率法の償却率」です。

減価償却累計額とは、これまで減価償却した合計の金額です。

初年度は購入費用全額に対して償却率を掛け、翌年からは減価償却後の金額に償却率を掛けるので、おのずと償却する金額は減っていきます。
この計算でも、最終の年には1円を残す決まりです。

減価償却費と減価償却累計額の仕訳

減価償却費が計算できたら、仕訳をして財務諸表へ反映させます。仕訳の方法にも2種類あります。

直接法

直接法とは、減価償却費を固定資産から直接引く方法です。貸方に固定資産を入れて、固定資産を直接減らします。無形固定資産は、常にこの方法を使用します。

減価償却費 ○○円 / 固定資産 ○○円

直接法では減価償却累計額が見えないため、注記として表示しなければいけません。

間接法

間接法とは、仕訳に固定資産を使わず、減価償却累計額を用いて間接的に固定資産を減らします)。

減価償却費 ○○円 / 減価償却累計額 ○○円

間接法では固定資産の帳簿価額が見えませんが、固定資産の取得価額から減価償却累計額を引くことで分かります。

貸借対照表の表示方法

貸借対照表では、減価償却された固定資産の帳簿価額や減価償却累計額が記載されます。
記載の方法には以下のようなものがありますが、主に使われるのは科目ごとの表示です。

科目ごと

建物や車両運搬具などの科目に従って、それぞれに建物の取得価額と減価償却累計額を記載していく方法です。
固定資産ごとに取得価額や減価償却累計額が分かりやすくなっています。

建物 10,000,000
減価償却累計額 △2,500,000 7,500,000
車両運搬具 1,000,000
減価償却累計額 △250,000 750,000

一括

一括で表示する方法は例外的な方法です。科目の固定資産取得価額を合計した後に、社内の資産の減価償却累計額を合計して記載します。

上記の例を一括で記載すると以下のようになります。

建物 10,000,000
車両運搬具 1,000,000
合計 11,000,000
減価償却累計額 △2,750,000 8,250,000

控除した額のみ

もうひとつの例外的な表示方法は、減価償却累計額を引いた後の額を記載する方法です。直接法で計上する際によく使われます。
この方法では、減価償却累計額がいくらなのか見えません。

建物 7,500,000
車両運搬具 750,000

損益計算書の表示方法

損益計算書には、減価償却費が経費(販売費及び一般管理費)の欄に記載されます。

減価償却の注意点


減価償却を行う際には、細かいルールについても注意が必要です。特別なケースに当てはまる場合には、慎重に会計処理を行いましょう。

固定資産が中古だった場合

固定資産の減価償却は、中古でも行う必要があります。ただし、その際には使用可能な期間を合理的に見積もり、耐用年数を決めることが必要です。
中古品の価格が新品の価格の50%を超えている場合には、新品と同じ耐用年数を使います。
また、合理的な見積もりができない場合には、国税庁が規定する簡便法で計算します。

中小企業の特例

中小企業や個人事業主が減価償却を行う場合には、特例があります。
中小企業や個人事業主が30万円未満の減価償却資産を購入した場合、合計300万円までは一度に経費にすることが可能です。

この特例は、青色申告をしている中小企業、農業協同組合などが対象となっています。

少額減価償却資産の特例

耐用年数が1年未満または取得価額が10万円未満、20万円未満のものについては一定の要件のもとで特例の対象となることがあります。
耐用年数1年未満、10万円未満のものは消耗品費に、10万円以上20万円未満なら3年間で3分の1ずつ経費にできる決まりです。

まとめ

減価償却は、正しく行うと会社の財務が正しく把握でき、節税効果も高まります。
ただし、対象の資産とそうではない資産があり、計算に使う法定耐用年数も資産によって異なります。

減価償却の対象となる固定資産がある会社は、正しい方法を理解しておきましょう。
減価償却の計算方法や表示方法の選び方にもルールがあるため、対象となる場合には注意が必要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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